和布(めら)くんと丘咲(おかざき)さん




「そんなやつやめちゃいばいいじゃないですか」
「あはは〜またそれか〜」
「またじゃなくて！オレは真剣に言ってんです！」
「んー…やめてどうすんの？」
「え！？いや…あの……、…やめてオレと付き合えばいいじゃないですか……」
「うふふ、和布くんはかわいいねぇ」
「…ッ冗談じゃなくて！……いや、あの、べつにオレと付き合わなくてもいいですから、あんな最低な野郎やめてください。お願いですから。オレ嫌です。丘咲さんが幸せじゃないのは嫌です」
「なんでわたしが幸せじゃないって思うの？」
「だって…！あんなひどいやつ…っ！」
「んー……たしかに、あの人はひどい人だし、最低で最悪で外道で鬼畜だけども……でも、わたしは好きなんだもん」
「もん、って……丘咲さんはどえむなんですか…？」
「あはは〜よく言われる〜」
「……そんな笑いながら言わないでください」
「……ごめんね？」
「…ッ、謝らないでくださいよ……ほんと、あんなやつのどこが好きなんですか？」
「うーん、うーん、顔？」
「…………」
「ふふ、冗談だよ。うーんと、時々やさしいところかなあ」
「時々って…。オレならいっつもやさしくしますよ」
「うーん、そうだね。和布くんはいつもやさしいよね。すごくいい子だなあって思うもん。きっと、わたしを傷つけないようにしてくれる。そしたら、泣いたりしなくて済むかもしれないね」
「だったら…！」
「でも……、わたしはその善良さを愛せない」
「…ッ」
「わたしはあの人のひどいところが好きなんだ」
「……さっきはやさしいところって」
「そうだね」
「あーもー……オレバカみたいじゃないですか…」
「はは、そうだね。でも、わたしは和布くんのそういうとこ好きだよ」
「……バカなところが？」
「うん。バカみたいに真っ直ぐでお人よしなところ」
「……さっきは愛せないって言ってませんでしたか？」
「愛せないけど、好きだよ。わたしが持ってないものだがら、愛おしいなあって思う。でも、時々まぶしくて目を逸らしたくなっちゃうんだよな」
「丘咲さんだって持ってるじゃないですか。ちゃんとあるじゃないですか。オレちゃんと知ってますよ」
「……ありがと」
「だから、オレと付き合いましょう！」
「あはは〜ごめんね〜」
「ううう、そんな軽く断らないでください」
「いや、だって、これで何度目だっけ？」
「……記念すべき１００回目ですよ」
「おお、おめでとう」
「嬉しくないっすよぉ」
「よっしゃ、じゃあお祝いしようか！飲もう飲もう！」
「……それ、ただ飲みたいだけですよね？」
「……バレた？」
「バレバレですよ……いいですよ。飲みましょう。酔いつぶれたところをあーんなことやこーんなことしちゃいますからね」
「うんうんどうぞどうぞ。いっつも先に潰れちゃうかわいい和布くん？」
「うっ…きょ、今日こそは！」
「はいはいがんばれがんばれ」
「……丘咲さんはオレのこと嫌いなんですか……」
「いやいや、だから好きだってば。きみが雨に濡れてダンボールの中に居たら拾ってあげたいくらいに好きだよ」
「なんすかそれ！」
「一戸建て建てたら、飼ってあげるね」
「ペットかよ！」
「ナイス突っ込み」
「……はぁぁああ……丘咲さんはどえすなんですね…」
「あはは〜よく言われる〜」
「そんなかわいい笑顔で言わないでくださいよぉ」








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ＢＧＭ：チャイナアドバイス／相対性理論