正しい場所からそっと離れて
もうどれくらい
はぐれものの迷子の行く先を
少しでもやさしいものにしよう

飽和する思考に殺されそうな気さえする
いっそほんとうに死があるならば安堵して手放すのに
安全安心の50年保障!今ならもれなくさらに30年上乗せ致します!
人生の容易さを口にすればするほどその困難が浮き彫りになってしまう
滑稽なピエロはいつまでもうまく笑えずに醜い赤をひく
せめてもの救いはきみが腹を抱えて笑うことだろうか

正しい場所などはじめからありもしない
間違った世界のために
ぼくははみ出した肢体を必死に切り落としてきた
それを自称美食家が口にして悪食共が食べ尽くす
菜食者のきみはかなしそうに微笑む

  (ああ、もうどこにもいきたくないのだ)

いつしかきみの手を取ることさえ戸惑うようになる
そんな日を想像してひとり泣いとこともある
ばかみたいだって笑ってみても
どうしたって左頬が引き攣ってしまう

きみの正しさの中で生きて死にたかった
もうどれくらい
無駄なことばを吐いたのか
呼吸をするのを惜しんでまで云うべきことなんてなかったのに
なかったのに、

  (ああ、きみはとおくにいってしまったのだ)

はぐれものの迷子それはだれのことだったのか
きみが差し出した小指を切り落としたのはぼくだったのか
今日も世界は正しくだれかがだれかの腹を満たすだろう
迷子もいずれ知らずに小指を食してわらうだろう




111016