ありふれた過信をちゃんと盲信して
正しさをきちんと踏み外して
迷子になって盲目のまま走る

(そろそろさよならと云いたいのです)

あなたを思いだす瞬間にちくりと胸が痛むのは
郷愁やましてや愛に基づくなにかでは決してなく
ひたすらの後悔とささやかな罪悪感のせい

(せめてさよならくらい云うべきなのです)

こんな日々をあなたはきっと予想していた
まぶしい感性を盗み取っていただけの
つぎはぎだらけの言葉の羅列を見透かして

(もうずっとさらよなだけ云いそこねているのです)

このなにもない町のこわいくらいの星空から
わたしの真実を見つけてほしかった
あなたに託した真実こそいちばんの嘘だったとしても

(きっともうさよならは云えないのです)

本当にさよならにつづきがあるならば
わたしの情けない涙が色づいて
あなたの庭にダイアモンドリリーを咲かせてほしい

(さよなら
 さよなら
 さよなら
 は、云いたくないのです)

まるで故人を思うような気分で
死んでいるのはわたしかもしれない
生きている定義を教科書に記していっそ殺して

(えいえんにさよならなのです)

頼りない365日を駆け抜けて
便りも出さずにごめんなさい
あなたが死んでいたらちゃんと泣きにいく
一輪の白いアネモネを持っていく




110308