うれしかったこと
たのしかったこと
ぜんぶまとめて0になったの
かなしかったこと
くるしかったこと
ぜんぶまとめても0になれないの

行き交うもののはやさに
戸惑っているあいだに
きみは0.1℃ずつ体温を失って
ぼくは涙を凍らせて

傷んだ指先がなにを落としたのか

くりかえされる過ちも
よりいっそううつくしくなる
すべてが淘汰されて
ぼくらまるで塵みたい

あふれかえる煩雑さに
呼吸さえ奪う合う
そんな時代もくるかもね

生真面目なきみの正義は
ころされるためだけにある
不真面目なぼくの悪は
ただのレプリカなのに

鈍くなった指先じゃ
きみにつけた傷を知るすべもなく
0と1だけじゃ
こころを知るすべもなく

いっそ本当に塵だったらよかった、と
"にんげん"と名付けられた不幸を
ぼくら慰めあって

うれしかったこと
たのしかったこと
かなしかったこと
くるしかったこと
0にしたくて
安易なリセットボタンを売り買いする
そんな時代だね

ああ、さよならを云いそこねて
穴に落ちて、それだけ。




101209