失くしたものがふっと色づく夜
浮かび上がる醜悪さが
ぼくの存在を縁取っていく

あしたの予定と
あさっての予定と
しあさっての予定と
ぼくがしぬという予定と
明確なものはたったひとつ

失くしたものがそっと逆襲する夜
沈み込んだ追憶が
きみの存在を縁取っていく

ぼくらは打ち消して
かぎりない無になって
飛んでいけるくらい軽くなって
でも飛べないことを知って
やっとやっと存在を知る

こんなにも希薄で消えてしまいそうだね
そう、云ってみても
こんなにも確固で消えてしまいたくなるよ
そう、呟いてみても

ぼくらはみんな世界の中心で
一緒に公転できない
終わりは終わりでしかない

重力がぼくらの妄想だった夜
ぼくは逆回転して
きみと跳躍してみたかった

失くしたものはずっと傍にあった




101114