消え入りそうなカンテラが
現実との境目でゆらゆらと
少女の碧い瞳の中にだけ
潤色された過去が瞬く
(泥を食べた記憶が
小さな水溜りから
湧き上がってくる)
煩雑さこそが安息となり
確かな孤独の愉楽を呑む
世界中の誰よりも幸福な夜は
何よりも哀愁がうつくしいのだと
(呼び覚まそうとする声が
耳鳴りのように響くが
もとより名前などない)
終わらないものを
愛することなどできない
永遠というくだらない歌を
きみが口ずさむ
一夜の夢があるだけ
(世界の端は心地良く
いっそ奈落のようだ
きみの歌もそろそろ
100822
夏(詩)にて。
イメソン:Bill Evans Trio/Alice in Wonderland