磨き上げれた悪意がきらきらと発光する
あれがほしくてほしくて手を伸ばせば
愚かな掌は鮮血を振りまいて
ぼくをうつくしく汚していく
あさましい恍惚にキスをして
赤が黒に変わっても戯れをつづければ
絵本の余白に隠された残酷さが
手招きしてぼくらをだきしめる
かわした約束の上にインクをぶちまけて
きみに送り届けてあげよう!そうしよう!
小指なんて失くしてしまえ
汚される純白なんて選ばない
忍ばせた漆黒があればいい
きらめく悪巧みが世界を蔽えば
あとはもうだれもわるくない
だけどぼくは立ちすくむ
うす汚れた襤褸をまとって
赤黒く変色した小指を大事そうに抱えて
微笑むきみを前に
にんげんはうそをつくから
うつくしさを裏切ることもある
きみもうそをつくから
ぼくのことすきだなんて云う
生まれたら汚されるしかなくても
深遠のくらやみのなかでしか
見つからない微光がある
それはきつく押し込めた奥底で
泣きたいくらいにうつくしく
ひかっていた
100620