こんな夜は名前が欲しい
簡単なものにされもいいから
きみの手にすっぽりと納まって
存在していたい

痛みに上塗りされてくぬくもりに
このまま腐っちゃってもいいかな
なんて、ばかなことを

誤魔化すように
まばたきの数をかぞえていたら
六等星がひとつ消えていった
きみの涙になったんだ

星月夜に浮かび上がる嘘を見抜けなくても
蛍光灯に照らされた偽りを知らないままでも

きみはそれでいいよ

やさしい体温に溶かされて
星になりそこねたぼくの悪事は暴かれないまま
何度もあの熱を確かめたくて手を伸ばしてしまう

もう微笑まなくてもいいよ
かなしみですらうつくしい夜だから
いまそっとスピカを盗んできたから




100608