感情を言語化することにすら飽いて
沈黙がぼくを侵食するのを待っている

向き合うことができずに
無防備にしまい込んだ過去が
溢れ出てしまう前に
どうか、

きみの呼吸を辿るのはもうやめよう
一握りのやさしさも底を突いた
約束は破るためにだけにある

残酷な忘却が微笑んでいる
ぼくを殺しもしないで
汚らしく喰い散らかしていった

わすれよう
わすれたい
わすれて、

残滓を集めて不様に叫んだって
きみの知ってる言葉にはもうならない

じわじわと群がる過去
まだなにか奪おうっていうのか

(まだぼくに生きろっていうのか)

ぜんぶ失くせば死ねるって思ったのに
忘却はほんとうに残酷だ

(わすれないで、)

死にぞこないがなにか云っている
過去はじっとぼくをみていた
黙ってとなりにいた




100508