世界がそっとまどろんでいる
まばたきを惜しむくらいうつくしい夜
静寂がいとおしくて
正しい呼吸音だけがひびく
たぶんだれも不幸じゃないんだね

(目を伏せた一瞬の隙に朝を盗んでしまおうか?)

妄想が首に手をかける
息苦しくて浅い眠りから覚めれば
2951回目のさつじんをしなくちゃいけない

肉体を置き去りにして
絶対を八つ裂きにして
期待を張り付けにして

甘い背徳が身動きを奪う
子守唄が静寂をゆらす
安寧がまねく腐敗にキスをして
生きることを遠ざけてみた

世界はじつは盲目なんだ
盗みそこねた朝が唐突に終幕を告げて
虚しさだけを残していった

(ぼくの方がなにか盗まれてしまったのだろうか?)

ただもう死ねないってそんな気がした




100407