きみを殺す方法を考えて眠る夜
安らかな静寂は呼吸を苛む

(いつから死にたいって云わなくなった?)

枕の下に隠した狂気は錆びついてしまった
泣いてばっかりいるせいだと嗤う声
かわいらしく咲いた赤い花の滑稽さ

死にたい今日が明日を生かして明後日だれかを殺すとして
それでもぼくらは殺さないかもしれないという可能性に縋りつく
縫いとめられた唇でなおもいい訳を並べて立てて
針をいくつ飲み込んだって喉もと過ぎればなんとやら
なにかが腹を突き破っても生きてみせたりする

人間は簡単に死なない

でもぼくがきみの頚動脈を傷つければ、食事にトリカブトを混ぜれば、頭蓋骨をハンマーで砕けば、簀巻きにして海に沈めれば、心臓をピストルで打ち抜けば、

人間は簡単に死ぬ

この部屋の酸素が尽きればぼくも死ぬ

暴言が体内を巣食う
憂鬱が細胞を蝕む
妄想が脳みそを溶かす

だけどぼくは死ねない
明日も生かされる予定になっている




100327