世界の話をしてあげよう
そう語りだすあなたはいつも「たとえば、」をたくさん使う
でもあたしはその「たとえば、」を知らない

やさしい声がすきだから
なにも云わずに微笑んでいる

無粋なひかりで夜を知る
もやもやが襲ってくる前に
帰らなくちゃ

まいにち律儀に夜を呼ぶなんて
おつかれさまです
たまには休んでいいのに
あたしは口を尖らせる

またあした、と云うたびに
あしたがなかったらどうしようって思う
夜が帰り道を忘れてしまったら
夜があたしみたいに帰りたくないって駄々をこねたら

どうしよう

あしたはちゃんとくるだろうか
もしきたら勇気を出してみよう

『「たとえば、」の「たとえば、」を教えて』

ひかりが震えている
勇気を出したあたしのために
夜を呼ぶのを遠慮しているのだろう

戸惑うようにやってきた夜も
いつもよりずっと明るい

今日はもう帰らないつもり




100210
(コミュに投稿した詩。テーマは「街灯と比喩」)