不意打ちのビンタは
思いのほか痛かった
あの時の傷よりずっと軽く
退屈な余談にすらならないのに
手当てできる傷や
曝け出せる弱さなど
本当は痛くも痒くもない
隠した涙は
致命傷にこそならないが
大人になれないぼくの
後遺症になってしまう
沈黙するやさしさは
墓守にさえ黙してこそ
スピリタス一滴をいい訳に
口にするなんて
滑稽な茶番劇
●●さん家にて上演中
下手くそだった笑顔は
随分と上達したけれど
本音と涙は失くしてしまった
云えないまま、
癒えないまま、
家無いまま、
深夜こっそりと
ひみつを紡いでいる
ぼくはもう
どこにもいない
100111