ゆるすこと
あまやかすこと
その違いを言い当てられて
ぼくは立ちすくむ

やさしさの所以をあばく
そんなかなしいことを
いつの間にか手にしていた

無知のいとおしさを
そっと指でなぞってみるけれど
もう欲しいとは思えない

偽善と罵るきみの声は
もういっそ甘美でしかなく
ぼくの中にまだ善行があったのかと
安堵すらする

確かな速さで死に近づいて
諦観を積み重ねては
さよならを懐にしのばせている

きみの右ポケットのナイフより
ずっと安心だけど
心臓を貫けないという意味において
ぼくのほうが滑稽だね

向けられたナイフを
ぼくはゆるそう

もうこれ以上
色褪せることない切っ先なら
だきしめて
キスをしよう

きみの痛みを食い潰して
ぼくは今日も

息をしている




091209