料理をするのは好きだけど
食べるのは嫌いだった
完成したらもう飽きていて
工程をすべてしっているから
口にするのは気持ち悪い
きみがおいしいと云って
料理をたいらげるのを
幸福感と罪悪感をひしめかせて
見つめていた
いつかミネストローネに毒薬を入れてやろう
ぼくはそっと誓って
きみの食べ残しを手でつまんで食べた
からだは必要だといったけど
おいしいかどうかはわからなかった
ぼくがしっているのは
数百種類の料理のレシピと
きみが食事をするときの笑顔だけ
ぼくは計画的殺人の真っ最中なのだ
たぶんあと50年もしたら
きみは死ぬ
おなかいっぱい
おいしかった
ごちそうさま
そう云って笑顔を浮かべたあと
きみはたしかに死ぬだろう
091125