ぼくの呼吸音がきみの子守唄になる
そんな泣きそうな出来事が
日常に組み込まれていく

生きているだけでゆるされる

そんなことは決してないけれど
きみの寝息を聞きながら
ぼくはひとときだけそんな夢をみる

やさしいね
しあわせだね

ほんのすこしだけ
こわいね

死ぬのはたぶん簡単だけど
それを戸惑うきみがぼくは好きだよ

いまそっと隠したナイフの切っ先
赤く染まっていることを知っているけど
黙っておこう

明日はカレーライスを作ってよ
きみが隠したナイフで
ぼくをもう一日だけ生かしてよ

じゃがいも溶けちゃった
にんじん大きすぎたかな
きみがはにかむ

ぼくはなんにもできない
ただ、おいしいって云うだけ

手首の白が鮮明で
ちょっとだけ泣きたくなる

今日はもう眠ろうか
あらがえない明日はどうしたって
やってくるから

おやすみ




091110