現実に慣れれば慣れるほどに

分裂する、

手を放せばいいのに
もういっそ
殺してしまえばいいのに

愛してはいけないものを
大事にしすぎてしまった

(だってこれがぼくの矜持だと思っていたんだ)

網膜に貼りつく鮮明な記憶は
精巧にできたにせもの
免罪のためには忘れるしかない
明日のためには捨てるしかない

洗脳の果てのオリジナルという思い込み
個性なんて裏路地の変な店に売っているのに

(憎しみすらぼくのものだれにもあげないよ)

清く正しく美しく
なにも憎まずなにも愛さず
善人という服を今日も着込む
ネクタイもちゃんと締めて

ああ、分裂する、

現在過去未来
繋がらない繋げない

(いつもちゃんと終止符を打てないぼくの悪い癖だね)

さよならさよならさよなら
忘却して滅却して焼却して

ちゃんと笑う
その度に死んでいく

交わることも
重なることもできない

巧妙な手口で
ぼくはぼくに殺される




091019