きみは今日
完璧すぎる微笑を浮かべて
ぼくに神様を勧めてきた

信じるものは救われる、
きみは先週一緒に映画を見たときよりも
よほどきれいに笑ってそう告げた

(信じるものは救われる、それはとても残念だ)

ぼくは黙ってその口上を聞いていたが
きみが口を閉ざしたのと同時に
きみに負けず劣らずの微笑を浮かべてから
飲みかけのコーヒーと
きみが頼んだケーキセットのお金を
机に置いて立ち上がった

ぼくが救われるときは死ぬときだけ
救われてしまったら
生きていけない
不幸を過信するという不毛さをもってして
今日まで生き延びてきた

きみが神様を信仰するように
ぼくだってずっと信じている

信じないということをずっと信仰している

  偉大なる全能の神よ!我らを救い給え!

神様はきっといるよ
本当に偉大で全能なのかもしれないね
だけどきみが提示するような救いはきっとないよ
神様は生まれたときからぼくらに救いを持たせてくれていたから
それ以上なんか贅沢だろう

きみと別れた帰り道
ぼくはそんなことを考える
ケーキセット代の話はそれなにり面白かった
だけどぼくが口を開くほど高い話じゃなかった
きみはぼくを哀れむだろうか
理解できないという顔をするだろうか
そのときはケーキセットをもうひとつ奢ってあげようと思う

(かみさま、愚かなるぼくらを救い給え)

ああ、今日はいい天気だ




090921