不均衡な成熟をもてあまして
音もなく夜に沈んだ
耳を澄ましても
死の足音ひとつ聴こえない
ぬるい空気が頬を撫でた
瞼のうらにはまだ
ささやかな虹彩があるのか
暗闇にまぎれて
まっとうな純粋さをもって
指先をすべらせる
やさしさに似せたなにかで
不器用に弄られてしまう
閉ざされた涙腺が
わずかに緩んで
ことばの残骸をえがく
安っぽい音楽が聴こえる
何度もなぞった旋律が
とおい国のおとぎばなしのよう
一握りの希望を
手のひらで湿らせて
旅立ちの日銭しよう
腐敗したからだを
ここに脱ぎ捨てることはできないから
すべり落ちた眼球が
わずかな眩さをえがく
脆弱な両脚をふるわせて
明日に立つ
すこしだけ静寂をやぶるために
130616