誇張される痛みにきみの後ろめたさをみた
淘汰されたかなしみが
素敵な謳い文句で店頭に並んでいる

なにもかもが普遍的なものにされてしまい
有限の波にさらわれて
一瞬の永遠にただただ涙する

あれはまぼろしであったと
強張る声で言い聞かせて
きみのすべてをたった数行の詩に変えて
広大な海に放り投げよう

  もう、もう、出会うことはないだろう
  (それでもさよならとは云えずに)

遠いどこかの海の果てで
あの日の涙はなにものにもなれずにいるけど
それでも消えてしまうことはないのだ

  だれかがきみの手を引いて微笑んでいる
  ぼくは嬉しそうにはにかんで
  そっときみを追憶の箱にしまう
  (いつかそんな日も来るだろう)

うつくしい朝焼けのなか
こんなにも寂寥で埋めつくされている
ありふれた愛撫がざらりとした心を撫でて
いくつ言いわけを並べても抗えないなら
暴かれてしまえばいい

  きみの涙は許されるから
  だれにも知られることがなくても
  辿りついた海の果てで
  ぼくが空っぽのてのひらの中にしまうから
  (たとえどんなに時間がかかったとしても)

抱えきれない虚しさも
夜明けの空に溶けていく

たしかにまぼろしでしかなかった
それでも目を閉じてきみを憶う
途方もない夜の合間のほんとうのこと





130415