ぼくに免罪符があるなら
子宮で死にたい

〈あのときの印象的な微笑みは、気づけばまっくろになっていた。だれが塗り潰したのか、今ではだれにもわからない。いや、わかる必要などどこにもない。あの左頬(いや、右頬だっただろうか)が少しいびつになる瞬間をもうだれも目にすることはないのだから。〉

ためらい傷を数えて呼吸を繋ぐ夜は
夢できみに殺されたい
(昨夜未明×××で少年の絞殺死体を発見)
かみさまのうたをくちずさむ
よく馴染んだ孤独が合いの手を入れて
そっと見守る諦観が甘い水を差し出す
(昨夜未明△△△で少年の変死体が発見)

『やさしい訃報をきみのもとへ
あふれんばかりの愛のことばをブラックバカラの花束に添えて』

薄明に呼吸を促されて瞬きを数回する
天井の模様をゆっくりと数えていれば
動脈のうずきを感じ
心臓の音が静かに聞こえる

カーテンの隙間からわずかに希望が差し出され
ぼくは暗澹とした気持ちになる
それは砂の味のする昼食よりもにがい

〈いつか少年は大人になる。そのときはとても上手に微笑みながら、まっくろな服を着る。長いまつげが影をつくり、薄いくちびるは厳かに結ばれて、ビクスドールのような肌がわずかに朱みをおびる。つらくかなしい真実が一人歩きして彼を彩り、すべてを魅了し、だれもが彼を愛すだろう。しかし、”少年”は死んでいる。〉

ぼくに贖う必要などない
罪は羊水に溶かされてしまったから
子宮で死ぬ夢をみる
ビードロの瞳から羊水がそっと溢れた