可能性をかなぐり捨ててぼくは今日から真面目に生きる
不可思議な痛みにうめくことも
きみのことばを無暗にかきあつめることも
もうないだろう

遠ざかる幻影に
あの春の日も(戸惑いと期待)
あの夏の日も(汗と涙)
あの秋の日も(穏やかな寝息と微笑)
そして、あの冬の日も(冷えた指先とさよなら)
ぜんぶ返そう

なかったことにはならないけれど
まるで他人事のように
さみしささえも色褪せて
ぼくはちゃんと笑えるはず

(ちゃんと笑うさ)

ほんとうは
ずっと前から真面目で大真面目に生きてきた
そんな窮屈さの中で不真面目さを敬愛していた
けれどそれらと抱き合うこともキスすることもなかった

かなしむ人がいるからとありふれた建前で
ちっぽけななにかを守っていた
守られたなにかは結局捨てなくてはいけないと
おぼろげにわかっていたのに

いまさら
抱きしめてキスをしても意味がない
大人の顔で笑われて窘められて宥められるだけ

(ずっときみと二人で大人にならなくたってよかったのに)

あのとき願ったひとしずくは
ぼくが飲み込んで涙になって蒸発した

たぶんぼくはもう大人になんてなれない
だから今日も笑う
不毛な真面目さをたずさえて

(ちゃんと笑うさ)





120401