罪の色を罰の味を
甘美だと誰かがうそぶいて
ぼくはそれじゃあひとつおくれと手を差し出す

口に含むこともできずに手のひらで転がして
溶けおちて腐りはてて
ぼくは狂うこともできない

なんにもなれない

きみが口にする正しさを従順に咀嚼して
だけど消化することもできずに
ひっそり路地裏で吐き出してしまう

優しいきみは優しい
それは目が眩みそうな真実だと思う
誰かが違うと云っても
きみが違うと云っても

だからもうこの手を離してもいいんだよ

ぼくを諦めてしまっていいんだよ
失望して断罪して忘却して
いつものように笑って





春は遠いねそう思っていたのに
いつの間にか新緑が眩い季節になっていた
この夏がいったい何度目なのかなんて
もう誰も覚えていないね

くりかえして
くりかえして

いつかきみに辿り着くとそう思っていたんだ

あの夏の妄想がゆらめく
まるでそれが現実みたいで
ぼくは泣きたくなる

どうしてまぼろしはいつもやさしいの

蜃気楼だよ幻覚だよと
誰かが云った
きみだったかもしれない

ぼくは静かにうつむく
涙が一筋こぼれおちる
それはアスファルトに染みも作らずに消えた

さよなら




090628