疾走するきみ
落下するぼく

離散する孤独に手を伸ばす
不謹慎な祈りほど
真摯だったものはない

ナイフなんて握らなくても
だれかは勝手に傷ついていく

鮮明な殺意も
暗澹とする未来の前には
まだまだ足りない

ピアスの穴
手首の傷
注射の痕

ひとつも持たない
ぼくの非行は
まぶたの裏に隠してある

飛行するきみ
失踪するぼく

密集する憐憫を打ち払う
冷たい瞳はいつも
世界の果てしか欲していない

ことばを失くしても
だれかは勝手に死んでいく

伏せたまつげから
こぼれ落ちる
透明な滴の有毒性を
だれも知らない

今きみがそっと眦にキスをした




















1003018

詩:つきしろ
絵:emura