掻き集めた呼吸を
宝箱にしまうの

冷たい指先が愛だと教えられた
小窓から差し込む月明かりだけが
ぼくの暗涙を知っていた
朧月よりやさしいものなんてない

手を伸ばす
どこかとおくに、
そう宛然とほほえめば
雲がせせら笑う

虚空を掻く手のひらは
冷たさすら忘れていく

廃退するうつくしさに身を埋めて
いつか白磁のような骨になる
猛毒さえもう及ばないところへ

はじまりを知らないぼくに
かなしみなど相応しくない

弔いのことばを
永遠の誓いにすりかえて
丁寧に拵えた追憶に
やさしいキスを

仕組まれた微笑を
コーキュートスに流して

ぼくははじめてわらう
きみのために
つたない花向けを贈る



















100305

詩:つきしろ
絵:emura