宝箱にしまうの 冷たい指先が愛だと教えられた 小窓から差し込む月明かりだけが ぼくの暗涙を知っていた 朧月よりやさしいものなんてない 手を伸ばす どこかとおくに、 そう宛然とほほえめば 雲がせせら笑う 虚空を掻く手のひらは 冷たさすら忘れていく 廃退するうつくしさに身を埋めて いつか白磁のような骨になる 猛毒さえもう及ばないところへ はじまりを知らないぼくに かなしみなど相応しくない 弔いのことばを 永遠の誓いにすりかえて 丁寧に拵えた追憶に やさしいキスを 仕組まれた微笑を コーキュートスに流して ぼくははじめてわらう きみのために つたない花向けを贈る |