ぼくが人間をやめない理由



やさしくてあったかくてそういう人がぼくの名前を呼んでいるのにぼくはそれを裏切ることばかりしている だって返事の仕方を忘れてしまったんだ 言葉はくるくると空回りして身のうちでのた打ち回って結局声になる前に死んでしまう 屍骸は腹の底に沈殿してきっといつかぼくの喉を塞ぐのだろう 息苦しいばかりの酸素を正しく奪って念願の終焉を迎えるのだろう(そんな夢みたいな話はどこにもないのだけれど)



ぼくは言葉に殺されたい
うつくしく残忍な言葉に殺されたい
きみにあげるはずだったとっておきの言葉で
殺されたいよ



(でもぼくはまだとっておきを見つけられていないのだけど)




090630