魔法のさんすう



とお満たされた夜よりも
ここのつだけ満たされた夜の方がしあわせで
ひゃく欠けた夜は底なし沼に捨てて
きゅうじゅうきゅう足りない夜は涙でうめ
たったひとつ失くした夜は呼吸をひそめ
たったひとつ満たされた夜をぼくはわすれない
きっと一生わすれない



たったひとつ満たされた夜を集めても
じゅうにもひゃくにもなりやしない
まるで欠けてくために生きてくみたい
完全無欠だったあのころに戻りたくて
いっちょ死んでみるかと思った
でも満たされるのはすこしさみしい
ほんのすこしさみしいから
とりあえずやめておこう






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