気丈なきみのはじめての涙
潤んだ瞳がおいしそうで
ぼくはひそかにごくりと生唾を飲み込んだ

もう一度きみの泣き顔が見たくて
あの飴玉がほしくて
ぼくはいろいろしてみたけれど
なかなか上手くはいかず

催涙スプレーはネット通販で格安で売っていた
なんとお値段780円
ぼくの時給よりも安いなんて

そっとポケットにそれをしのばせて
スキップしながらきみのもとへ

だけどもう飴玉はこぼれおちていた

きれいだった
かわいかった
おいしそうだった

背の高い男がきみの飴玉をそっと口にして
ぼくの視界はだんだん滲んでいって
もうその先は知らない

たぶん逆噴射したんだ
ぼくのやわな心にむかって




091114
(コミュに投稿した詩。お題「催涙ガス」)